シュガーロード紀行 飯塚#005 千鳥屋本家の千鳥饅頭・千鳥サブレ

シュガーロード紀行 飯塚#005 千鳥屋本家の千鳥饅頭・千鳥サブレ

飯塚とお菓子

飯塚で様々なお菓子が作られるようになるのは、炭鉱業が盛んになる明治~大正期。

工場見学に行ったひよ子の吉野堂も、明治30年に飯塚で開業、ひよ子を売り出したのは大正元年のこと。チロルチョコで知られる松尾製菓が現在の田川市で製菓業を開業したのも明治36年だった。)

炭鉱で過酷な肉体労働をする人達に、体力を補い疲れを癒すために甘いお菓子が大変好まれたことも大きく関連しているだろう。

その頃の筑豊炭田には150以上の炭鉱があり、日本全国そして外地からもたくさんの炭鉱労働者が集まっていた。

また、飯塚も長崎街道の宿場町=砂糖やお菓子その製法の通り道だったので、お菓子の一大生産地となる素地が近代以前から既にあったことも大きく影響していると思う。

筑豊炭田の石炭生産量と人口が右肩上がりで増えるにつれて、お菓子の消費量も一層高まり、飯塚だけでなく筑豊一帯で製菓業はますます盛んになっていく。

千鳥屋本家

飯塚の老舗のお菓子屋さんを訪れてみたい。一軒目は旧伊藤邸に電話番号の貼り紙があった千鳥屋。

白壁の純和風の店舗がとても素敵。
金文字の看板にも老舗ならではの重厚感がある。

お店の横には、橋の欄干らしきものがあった。

らんかんに みだれ飛ぶかな 千鳥跡
原田青夜こと利一郎

飯塚川にかかっていた栄橋は昭和初期に造られ千鳥屋本店横の橋のらんかん(親柱)には、上部に銅板装飾の千鳥のマークが刻まれております。
平成二十三年四月

今はなくなっているが、昔はここに飯塚川という川があり、橋がかかっていたらしい。

千鳥屋の歴史

天正十八年(1590)
九州北部を支配していた龍造寺隆信の子・政家が病弱のため、家臣の鍋島直茂(鍋島藩祖)に領地を譲り、太俣郷(現・佐賀県佐賀郡久保田町)に隠居。家臣の原田家も政家にしたがって移住。やがて武家の内職として酒饅頭などの菓子を作り、生計を立てる。

寛永七年(1630)
原田家が佐賀県佐賀郡久保田町に「松月堂」の屋号で本格的に丸ボーロ、カステラを中心としたお菓子屋を始める。



昭和二年(1927)
福岡県嘉穂郡飯塚町住吉の中央市場(現・飯塚市本町の永楽通商店街)入り口に松月堂の飯塚支店として「千鳥屋」を開店。千鳥饅頭、丸ボーロ、カステラの三品を専門に製造販売。

千鳥屋本家 沿革 より-

千鳥屋のHPを見ると、ご先祖は戦国大名 龍造寺家に仕えるお武家さんだったとのこと。千鳥屋の前身の松月堂の創業は寛永七年(1630)、ということは、単純計算で今年は創業389年目ということになる。

お店の歴史の古さにも驚くが、もとは佐賀のお菓子屋さんだったことも意外だった。久保田は以前訪れた小城や牛津の隣にあり、そこも長崎街道が通っていた場所。

松月堂が飯塚に支店を出した昭和2年頃は、筑豊炭田が日本最大規模の炭田となり、ちょうど最盛期を迎えていた時期にあたる。その後、松月堂は昭和14年に閉じられ、以後飯塚の千鳥屋が本店となった。
(確かなことは分からないのであくまで推測だが、本拠地を移すほどに当時の飯塚での売上げが大きかったのかもしれない。)

なお現在は、飯塚が本拠地のこの千鳥屋本家と、福岡市博多区が本拠地の千鳥饅頭総本舗の2社に分かれている模様。

この飯塚の紀行を行うまで私も千鳥屋が2社あることに気付いていなかったが、現在福岡で流通している千鳥饅頭も実は2種類あるということになる…。

店内には和菓子の他に洋菓子(特に焼き菓子)も色々並んでいる。
チロリアンもこの店の看板商品。カステラ、丸ボーロも今も売られている。

ここでは千鳥饅頭などを購入した。

千鳥屋本家

千鳥饅頭

飯塚で買ってきたお菓子を試食してみたい。まずは千鳥饅頭。

創業三百七十余年来、守り続ける伝統のカステラと丸ボーロから生まれた千鳥屋の代表菓です。

口ほどけのよいやわらかな舌ざわりの白餡と風味よい焼き皮の上品な甘さ。凛とした姿は、時代を越えて皆様に愛され続けております。
千鳥屋HP より-


お饅頭には千鳥の焼き印が捺されている。皮はやや凹凸がある見た目で、特に皮の表面部分はしっとり感よりサクッと感がある。
いわれてみれば確かに丸ぼうろにも通じる食感があるような…。白あんはなめらかでやさしい甘さ。

この千鳥饅頭にも言えることだが、長い間愛され続けるお菓子にはシンプルなのに飽きのこない味わいがあると思う。

千鳥サブレ


店頭で見つけたので千鳥饅頭と一緒に買った商品。
千鳥屋にサブレがあるのは知らなかった。商品名も筆書きで包装も何だか和風の趣き。


このサブレは何と言っても形がかわいい。さっくりと焼き上げられていて素朴な味わいだった。

(来訪日:2018/11/25)