シュガーロード紀行 佐賀#009 鶴屋の肥前ケシアド
鶴屋に行った際に丸房露などと一緒に買ったお菓子。
一緒に入れてもらったお菓子のしおりにはこう書かれている。
当家に伝わる江戸中期の宝暦五年(1755)頃に編纂された『菓子仕方控覚』という「鶴屋文書」の中に「けし跡(けしあど)」というポルトガル伝来の南蛮菓子があります。
これは、ポルトガルの「ケイジャーダ」というチーズ菓子のことで「文書」のレシピには当時入手困難だったチーズの代わりにカボチャのあんを使用したことが記されています。
この度、当時のレシピをもとにしてチーズを練りこんで、現代風にアレンジして「けし跡」を「肥前ケシアド」として復刻いたしました。
「肥前の菓子」にもケイジャーダについての記述があった。
リスボン郊外の古都シントラの伝統銘菓で、バターやチーズのあんを皮でくるむ。
現地では昔ながらの素朴なお菓子として、家庭でも気軽に作られ親しまれているとのこと。
ネットで画像検索してみたところ、見た目はエッグタルトにも似ている。
ケイジャーダは日本に伝来した後「けさちいな」と呼ばれる菓子になったらしい。
けさちいなは江戸期にはお殿様へ献上するために作られていたこともあったようだが、カステラや丸ぼうろと違い、広く浸透することなく製造が途絶えてしまった。
「肥前ケシアド」は、見た目はタルトやパイのような焼き菓子というよりもお饅頭に見える。
割ってみたところもお饅頭っぽい。
食べてみると、かぼちゃ風味の餡もとても滑らかでしっとりした食感。
チーズの代わりにかぼちゃを使ったというのは、牛乳や乳製品にほぼ縁のなかった江戸時代の日本人が一生懸命考えた結果なんだろうなぁと思う。確かにかぼちゃのクリーミーな食感は、日本にある野菜の中では一番チーズに近い(?)気がする。
しかし改めて見てみると、見た目も呼び名も、もとのケイジャーダからは全く別物のお菓子になっている。
だがその変化こそが面白いのはないかとも思う。
お菓子が時間や場所を超えて伝播・継承されていくうちに、その土地の風土にあわせて「成るべくしてこう成った」ということ。オリジナルからは遠ざかるかもしれないが、原料や味も少しづつ変化して、その土地ならではの新しい味わいが生まれることも面白い。
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