九州の百貨店王と牛津町会館・牛津赤レンガ館
牛津駅からしばらく歩き、牛津町会館を訪れる。
これは「玉屋デパート」の創業者である田中丸善蔵の邸宅だった建物。
玄関前の立派な松の木も印象的。
田中丸善蔵は(実際の開業は鹿児島の山形屋に先を越されてしまうが)九州で初めての百貨店開業を計画した人物。
玉屋デパートはかつて長崎(佐世保・諫早)佐賀(佐賀市呉服町・伊万里)・福岡(福岡市東中洲・北九州市小倉)に店舗があった。
最初のデパート店開業は大正年間の佐世保、昭和17年には香港にも進出、昭和年間は九州北部3県で店舗が営業していたが、平成以降は閉店が続き、現在は百貨店としての玉屋は佐賀の店舗のみとなっている模様。
塀に掲げられた案内板には、
「明治末期から大正初期にかけて建設されたと考えられています。
昭和29年に佐世保玉屋から牛津町に寄贈され、今日まで町民の集会所や文化サークルの稽古事に活用されています。」と書かれている。
何か催し物がある日は中も観れるのかもしれないがこの日は閉館してるようだったので、建物や庭を外から眺めるだけにとどめる。
次に訪れたのは牛津町会館のすぐそばにある牛津赤れんが館。
玉屋デパートの前身である田中丸商店の倉庫として、明治時代後期に建てられた建物。
牛津は川港としても栄え、近隣地域の物資の集散地としても栄えた場所。
もともと商業が盛んだった土地柄もあって、「九州の百貨店王」とも呼ばれた田中丸善蔵のような人物が輩出されたのだろう。
(ちょっと話がずれるが、”田中丸”という名前を私が初めて知ったのは九州国立博物館で見た展示物に添えられた説明書きの札だった。
善蔵は長い年月をかけて九州の陶磁器を蒐集し、その蒐集品は「田中丸コレクション」の名で知られている。古伊万里・古唐津・鍋島など、特に故郷佐賀の焼き物の名品が多く、福岡の美術館・博物館でも展示されているのをよく目にする。コレクションは現在財団法人が設立され、保存・管理を行っているらしい。)
建物を改めて見てみたい。
扉や窓の覆いには銅板が使われ頑丈そうな作り。
そして注目すべきは屋根。
屋根の傾斜がすこしふくらんだ瓦葺になっている。これはむくり屋根と呼ばれるもので、曲線の形状により軒先に水が溜まりにくく防水効果も高いらしい。
レンガでこの柔らかな曲線を作りだすのはかなり難易度が高いのではないだろうか。屋根周辺はレンガの並べ方を変えて装飾的な模様を作っているのも面白い。
牛津駅の駅舎はこの倉庫をモデルに作られているそうで、駅の屋根もこのふくらんだ形がそっくり再現されている。
この建物も常時解放されてはいないので中に入ることはできなかったが、牛津町会館と同じく地元の催し事などに今でも活用されているとのこと。
(来訪日:2018/02/11)
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