シュガーロード紀行 平戸#005 蔦屋のカスドース

シュガーロード紀行 平戸#005 蔦屋のカスドース

平戸の老舗のお菓子屋さんを訪れてみたいと思う。

蔦屋の創業は1502年(文亀2年)、現在も営業する九州の菓子屋としては創業が最も古いお店であり、江戸時代には平戸藩の御菓子司も務めた。今のご店主は24代目になるそう。

お店の入っているこの建物には「按針の館」という看板もかかっている。
三浦按針(ウィリアム・アダムス)が住んだこともある場所らしい。
按針の館


お店では、カスドースや花かすてらなどの復元菓子や季節の和菓子を販売されている。
まだ暑い時期だったので店頭には麩まんじゅうも並んでいた。
(後で知ったが、閑雲亭で頂いた烏羽玉も蔦屋さんで造られたものだったみたい。)

購入したお菓子は、売り場の奥にあるお座敷でコーヒーと一緒に頂くこともできるのでここでカスドースを頂いた。
お座敷は中庭に面していて、テーブルにはお菓子の製造に使う木型が飾ってあった。

実を言うと、平戸に行こうと思ったのは、カスドースを食べてたみたかったからというのもある。
はじめて食べるカスドースは、とても甘くて濃厚な味だった。ブラックのコーヒーと一緒に頂くと丁度よい感じ。小さいお菓子だけどこの甘さ故それでも十分満足感がある。


カスドースというお菓子は、それほど広く知られていない気がする。

「肥前の菓子」のカスドースについての記述を見ると、江戸時代のあいだはお殿様の為の”御止(おとめ)菓子” とされ、明治維新までは一般の人の口に入ることがなかったと書かれている。

また、平戸は今では平戸大橋がかかっているので容易に行き来できるようになっているが、この橋が開通したのは昭和52年。それ以前は船を使って海を渡らなければ行けない島だったので、島の外にあまり広まることがなかったのだろう。

加えてカスドースは作るのにも手間がかかる。
まずカステラを焼いて、それを小さく切りそろえ、溶いた卵黄に浸して沸騰した糖蜜で揚げ、周りにグラニュー糖をふんだんにまぶして出来上がり。作るのに1日以上かかるらしい。

カステラに比べカスドースの知名度が低いのは、こういった事情も関連しているように思える。


これはお土産で買って帰ったカスドース。
そのままでも勿論美味しいが、オーブントースターで少し焦げ目がつくくらいに焼いて食べても美味しかった。

創業文亀2年 元祖カスドースの平戸蔦屋

(来訪日:2017/09/09)