月蝕 能×朗読劇 住吉神社能楽堂
- 2018.02.01
- その他
月蝕の夜に、夢野久作の「月蝕」の朗読劇を観に行った。
この夜は皆既月食だけでなく「スーパー ブルー ブラッド ムーン」と呼ばれる珍しい現象が重複した特別な夜だったらしい。こんな稀な天体現象のことまで折り込み済みで、この日に「月蝕」というタイトルの公演を企画・開催したというのは凄いと思う。
舞台は能と朗読劇の二部構成。
能を鑑賞するのは初めてだった。能楽堂に入ったのも初めて。
案内役の方も解説されていたが、能は久作自身も修業をしていたので、彼にとってひときわ縁が深かった芸能と言える。
彼の文壇デビュー作「あやかしの鼓」は能との関連の深い楽器である鼓が題材となっているし、「能とは何か」「能ぎらい/能好き/能という名前」などの能についての随筆もあるし、そして彼の能の師匠の伝記「梅津只円翁伝」も書き残している。
能の演目は「羽衣」。能自体は、むづかしいことは正直あまりよくわからなかった。古語をよく知らない私の勉強不足のせいなのでこれは仕方ないのだけど。
ただ、舞う人の動作や姿勢は、見ていて美しいと思った。
生で鑑賞して気付いたが、鼓という楽器はそれほど大きな音は出さない。
「カンッ」「ポン」といった感じの甲高く大きな音を出していたのは大鼓のほうだった。
「あやかしの鼓」に出てくる、「ポ・ポ・ポ・・・・・」という鼓の音がうまくイメージ出来なかったのだけど、実際の鼓の音を聞いてみたら、「ああ、こういう音だったのか」と納得できた。主張が激しいわけではない、どちらかというと感情を抑えたような控えめな音なのだが、それでもよく通る不思議な音だ。
朗読劇は、「月蝕」の朗読とダンスに、時折笛の演奏が入る。
能舞台の為、演者の方の足元は白足袋。
終盤の”月”の嗤い声と台詞は真に迫るものがあった。
「これはお芝居なのよ。」
「ではサヨウナラ・・・みなさんおやすみなさい。」
公演を見終わって能楽堂を出て見た空はいつもの夜より仄明るい。
ずっと靄がかかっていてこの夜の月蝕は見えなかった。
(2018.01.31)
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