幽霊・妖怪画の世界展 福岡市博物館

幽霊・妖怪画の世界展  福岡市博物館

2018年の夏、福岡市博物館で鈴木春信展にあわせて同時開催された「幽霊・妖怪画の世界」展。

ホールに掲げてあるパネルでも、どうしても添え物的な扱いをされている。

鈴木春信展のフライヤーでも、隅っこにちょっと載せられている程度。
まあ今回の展示は全部で50点の小規模なものなのでしかたない。


福岡市博物館は膨大な幽霊画・妖怪画のコレクションを保有している。

これは吉川観方という人が生涯をかけて蒐集したコレクション(約12,000点)を、彼の死後、福岡市博物館が一括購入したため。

2006年にはそのコレクションの中から選んだ160点を一挙公開する「美と恐怖とユーモア 幽霊・妖怪画大全集」という特別展を開催、福岡だけでなく全国数ヵ所の会場を巡回した。

これはその展覧会のときの図録。
展覧会を観に行っても図録まで買うことは殆どないが、これは珍しく買った。
すごく気に入ってて今でも時々眺めている。特に妖怪パートは見ていて全然飽きない。

今回の展示の入場券と会場で貰った出品リスト。吉川観方自身が描いた幽霊画も複数点展示される。
半券の作品は祇園井特という人の「お菊幽霊図」(江戸後期)。なんというか、今にも夜闇に消え入りそうな儚げな幽霊とは違って、姿かたちの輪郭もはっきりしているし強そうな感じ。


今回の展示は撮影OKというのも嬉しい。
以前の展覧会で見て、図録でも何度も見ている作品だけど、やはり実物を見れるのは良い。

「百鬼夜行絵巻」で一番好きなお釜の妖怪。
全身黒系でまとめた服とつば広帽子(お釜)がシックな雰囲気なので、勝手に「モード君」と呼んでいる。

「百怪図巻」の猫また。(かわいい)

「寿といふ獣」
十二支の動物の体のパーツを一つに集めた妖獣だが、吉祥を呼ぶおめでたい生き物らしい。


百怪図巻の福岡ローカル版的な「怪奇談絵詞」。
右上は唐人町の犬が生んだという「鳥犬(からすいぬ)」の妖怪。身近な地名が出てくると俄然親近感が湧いてくる。
左下は粕屋郡の山奥にいたという白い妖怪。

「怪奇談絵詞」は他にも「釜山海の蝦蟇」(釜山港に住んでいて日本人が嫌い)や「オロシヤの人魂」(激しい風が吹くとおろしやおろしやというらしい)など変な妖怪がたくさん載っている。幕末~明治頃に描かれた絵巻らしいので、話に聴くだけで実際に目にしたことはなかっただろう異国人も、妄想がふくらむままに”よくわからないもの”として妖怪と同じ扱いにしているのが面白い。


そしてこれは「本木村の化け物」
筑前国宗像郡本木村(今の福津市あたり)に現れ、数年にわたって村人たちを悩ませた妖怪。
最後は福岡藩主が遣わした犬によって退治されたそう。

面白いのは退治された後の化け物の骨のスケッチなどが残されていること。
化け物の正体は狸だったのでは、と推測されている。


鈴木春信展もいい内容だったけど、個人的にはこの展示のほうがより楽しんで観れた。
福岡市博物館は幽霊・妖怪画の展示を毎年やってくれてもいいのにと思う。

(来訪日:2018年7月)