「ありがとう箱崎」at 九大箱崎キャンパス

「ありがとう箱崎」at 九大箱崎キャンパス

百年以上の歴史を持つ九州大学箱崎キャンパスの閉校企画として「ありがとう箱崎」が開催された。
2/8(金)には閉校セレモニーも行われ、期間中は様々な関連イベントも開催されている。

旧工学部本館は、箱崎キャンパス内の各所にあった標本類が集められて総合研究博物館となっている。この博物館は常設展示も行われているが通常は平日しか開館していないため、土日も開館するこの機会に見に行ってみることにした。

先日の近代建築物ツアーの際はここからは入れなかったが、この日は正門から中に入ることが出来た。
寒いうえに時折小雨も降るような天気の悪い日だったが、多くの人が訪れていた。

こちらが旧工学部本館=総合研究博物館。

九州帝大だった頃の工学部には、大正十一年(1922年)に来日したアインシュタイン博士も、福岡を訪れた際に立ち寄ったらしい。(アインシュタイン博士がなぜ福岡を訪れたのか、そのいきさつも調べてみるとなかなか興味深いエピソードがあった。くわしくはこちら↓)
No.79 九州大学医学部のきらめく博士たち/西日本シティ銀行 ふるさと歴史シリーズ「博多に強くなろう」


こちらは玄関。木製の扉や上部に施されたステンドグラスが優雅な感じ。
この建物が建造されたのは1930年。建物自体も貴重な史料と言えるのではないだろうか。

建物の設計図も展示されていた。

廊下や階段にも様々な展示がされている。


これは館内にあったポスター。
特に昆虫標本の所蔵数がすごい。

館内は研究室や教室がそのまま展示室になっている。


昆虫資料開示室

室内の掲示によると、九大が所蔵する昆虫標本の数は日本最大規模らしい。

昆虫標本を見るたびに思うのは、地球上にはこんな綺麗な色の生き物がいるのかということ。
個々の色の美しさだけでなく、色の豊富さにも驚かされる。

“プラチナ”の名前の通り、まるで金属で作ったみたいに見えるコガネムシのなかまの標本。

標本製作中のカブトムシ。待ち針でとめてある。

小鳥程の大きさのある蝶の標本も。綺麗だけどこれが実際に飛んでいるところに遭遇したらぎょっとするだろうなと思う。


化石標本開示室

一室丸ごとアンモナイトの化石だらけ。

先日ある科学番組にアンモナイト研究第一人者の九大の先生が出演されていたのを見た。

その時「化石というのは、動物の変死体の痕跡です」みたいなことを話されていたが、こんな小さな赤ちゃんアンモナイト貝がびっしり固まって化石になっているのを見ると、このアンモナイトたちの身の上にいったいどんな災禍が降りかかったのだろうか、などと考えてしまう。

洗濯機の排水ホースみたいなものも、チョココルネの失敗作みたいなものも、アンモナイトの化石。


高壮吉鉱物標本開示室

高 壮吉(こう そうきち)はこの鉱石標本を蒐集した先生の名前らしい。

高壮吉鉱物標本は明治45年(1912年)から昭和4年(1929年)まで工学部採鉱学教室の教授であった高壮吉により、1890年代から1930年代にかけて蒐集されたもので、約1200個の標本よりなっています。標本の産地は世界各国に及んでいますが、とくに日本に産した見事な鉱物結晶の標本を主体としており、東大の若林標本、和田標本とともに20世紀初期の三大標本の一つに挙げられています。

高壮吉鉱物標本WEBページ より引用

3つの部屋に分けて鉱石標本がびっしりと展示されている。

アメシストの巨大な結晶。

シャーレに入ったジルコン。

トルマリンは日本語に訳すと電気石、名前が面白い。しかも種類が色々ある。

鉱石標本は一つ一つの色や形が変化に富んでいて本当に見飽きない。いつまでも眺めていられそうだが展示されている標本数が膨大なので、とても全部は見て廻れないほどだった。


廊下にはこんな感じで、多分中には標本がしまってあるのであろう木の抽斗がずらりと並んでいる。

ところで博物館って、埃の匂いとナフタリンの匂いが混じったみたいな変な匂いが常にうっすらと漂っているけど、あの匂いをかぐと不思議と心が落ち着く感じがする。


動物骨格標本開示室

魚類から類人猿まで様々な骨格標本が展示されている。
リュウグウノツカイやエイなどの骨格は特に形が面白い。ウマなど大型動物の標本もある。

サルの骨格だけは、他の動物骨格にはない不気味さを感じてしまうのは、多分人間の骨格標本とよく似ているのにちょっと違うからだろう。


会議室

建物の最上階にある部屋。大きな壁画と共に、ここはこのイベント期間のみの特別公開らしい。
フラッシュを焚かなければここも撮影可だったので一枚写真を撮った。

布張りの椅子や分厚いカーテンや絨毯、天井の大きなシャンデリアなど、とても豪華な感じ。


写真で紹介したのは全体の展示のほんの一部。
何時間でも見ていられるほど質も量もとても充実した博物館だった。
今回だけでは展示を見きれなかったこともあるので、もし来れる機会があるならまた見に来たいと思う。

だが、こんなに素晴らしい収集品の数々も、箱崎キャンパスの閉校に伴って存続の危機に面していることを思うと複雑な気持ちになる。
移転・九大、どうなる「宝」 博物館所蔵145万点 宙に浮く保管先/毎日新聞 2019.01.31 

たとえば、いまは博物館の閲覧は無料だが(利用する側としては無料のほうが勿論有難いけれども)、存続に際して色々な費用が必要なのであれば入場料制にすることも考えてみていいのではないかと思う。

これだけ充実した展示を閲覧出来て、かつそれらの貴重な収集品の数々が安全に保存される為であるなら、有料であるのがむしろ妥当なのではないだろうか。

色々課題はあるけれど、この博物館がなくなってしまうのは箱崎にとって大きな損失になると思うし、何よりもすごくかなしい。


【最後に】 この記事を読んでいただいた方へ
現在この総合研究博物館の存続のための署名キャンペーンも行われています。
ご賛同頂ける場合は是非署名をお願いします。

九州大学総合研究博物館の九大箱崎キャンパス跡地(旧工学部本館)での存続を望みます/ change.org



 博多に強くなろう 北九州に強くなろう 100の物語