100年前のパンデミック スペイン風邪と夢野久作

100年前のパンデミック スペイン風邪と夢野久作

※比較年譜の制作にあたっては、西日本新聞電子版「スペイン風邪、猛威の記録 100年前の記事で新型コロナと比べてみた」(2020/03/22) の記事、「夢野久作-あらたなる夢-」河出書房新社/刊の「夢野久作 年譜」(西原和海氏 編) を参考にしました。

★:夢野久作(杉山泰道)に関する出来事
●:スペイン風邪・世界情勢等に関する出来事

【大正七年/1917】久作28才

★この年還俗。杉山農園に戻る 短歌グループ「浅香会」に参加
★1918.03 雑誌黒白創刊、杉山萌円・青杉居士等の名で小説・エッセイ等寄稿

●1918.03 スペイン風邪第1波発生 アメリカで流行

【大正八年/1918】久作29才

★1918.02 鎌田クラ嬢と結婚
★1918.09 杉山萌円名義の初著作出版

●1918.秋~  スペイン風邪第2波発生 10月上旬から日本全国に感染拡大
●1918.10.10 福岡県内初の患者が発生
●1918.11.11 第1次大戦の停戦協定が発効

★1918.11.24 九州日報に短歌発表
~1919.06まで断続的に掲載

●1918.12.01付 福岡日日新聞〈感冒漸く減退 福岡県下の患者一時は六十万人に達す〉

★この年喜多流の謡曲教授になる

【大正九年/1919】久作30才

★1919.04.21 九州日報に童話「正夢」発表
★1919.04.24 九州日報社に記者として入社
※加藤介春(「山羊髯編輯長」の津守編輯長のモデル)との出会い

●1919.春~秋 スペイン風邪第3波発生

★1919.05.26 長男 龍丸 誕生
★1919.05.28 九州日報に自筆漫画を添えた「時事漫画」発表
~1919.06.29号まで断続的に掲載

●1919.10 下旬から再びスペイン風邪流行、
※20年1月に患者数・死者数ともピークに達する

【大正十年/1920】久作31才

●1920.01.07付九州日報〈新年来ますます猛烈を極める〉1~5日の死者が104人に上ったと報道。
●1920.01.07付九州日報 全国各地の日本軍師団での患者数が計1万2千人に上ることを伝える。
●1920.01.11付九州日報 福岡県下の巡査教習所や筑豊地方の炭鉱で流感がまん延
●1920.01.16付九州日報 門司市の警察署長が映画館や劇場の館主に対して〈「予防口蓋」を着用せざる者は入場を拒絶すべき用訓示〉
●1920.01.19付九州日報 〈看護婦が足らぬ〉
●1920.01.19付九州日報 〈火葬場の如きも市内公私合わせて十五竈を有して居るが之が又毎日満員で、現在の調子で死亡率が増えたらやむなく棺を一日止めなければなるまいとの事〉
●1920.02.01付九州日報 〈終息に近づく〉〈流行の当初最も猖獗を極めし炭鉱地方に於いては其後予防注射の励行マスクの奨励等によりて只管其の予防に努めたる結果(略)漸次終息に向かえるもののごとし〉
●1920.02.14付九州日報 〈県下の流感ようやく衰ふ〉
●1920.05.14付九州日報 福岡県筑後地方で〈先月末より流行性感冒再燃・縣當局より救護班急派〉

★1920.05. 長編探偵小説「呉井譲次」を雑誌黒白にて連載開始
★1920.09. 「呉井譲次」→「蝋人形」に改題

【大正十一年/1921】久作32才

★1921.01. 「蝋人形」未完のまま連載中止。
※昭和8年に「暗黒公使(ダーク・ミニスター)」として再生

★1921.12.06 九州日報に童話「犬の王様」発表


第一次世界大戦と世界の流行

●1907年頃 1918年型インフルエンザ(スペイン風邪)の前駆体が発生

●1914.07.14 第一次世界大戦 勃発

●1916 フランス・エタプル駐屯地のイギリス陸軍内でスペインかぜと症状が類似する致死率の高い新種の病気が流行

●1918.03 スペイン風邪第1波 アメリカのデトロイトやサウスカロライナ州付近などで最初の流行

●1918.秋~ スペイン風邪第2波 世界中で同時期に発生、病原性が強まり重篤な合併症を起こし死者が急増

●1918.11.11 第一次世界大戦 停戦協定発効

●1919.春~秋 スペイン風邪第3波 世界中で流行、医師・看護師の感染者が多く医療崩壊が発生し更に感染拡大

※独・英・仏・米では第一次世界大戦時の検閲で報道が最小限に抑えられたのに対し、中立国だったスペインの状況は大きく報じらる

※1918.01~1920.12の間で世界中で5億人が感染(当時の全世界の人口の1/4に相当)
死者数:1,700万人~5000万人、1億人とする推計も


日本国内の流行

●スペイン風邪 第1回流行期 1918.08~1919.07
全国での患者数:約2117万人 死者:約26万人 死亡率:約1.2%

●スペイン風邪 第2回流行期 1919.08~1920.07
全国での患者数:約240万人 死者:約13万人 死亡率:5%以上